下呂という不思議な名前、そして発音はどのようにして成立したのでしょう。下呂という名の由来について見ていきましょう。要約すると、下呂は古くは 下留(しもつとまり、あるいはしもとまり)と呼ばれて いましたが、時を経るに、「げる」からさらに 通称化されて「げろ」と発音されるようになったようです。
奈良時代後期、宝亀7年(776年)に宿駅として下留(しもつとまり)が置かれ歴史に登場します。 室町時代に書かれた万里集九の「梅花無尽蔵」には
「予在飛之温泉。々々所在、曰 益田郡 下櫓郷 。」
と あるので、この頃にはすでに「げろ」という発音であったと考えられます。ここで「しもとまり」という発音と すべて音読みの「げろ」の間にある変化は、飛躍といっても差し支えないでしょう。この飛躍が発生した要因として考えられるのは、飛騨が米の収量が少ないために「下々(げげ)の国」と呼ばれていたことが あげられます。地名に「下々」のイメージが重ねられ、「下(しも)」が「げ」と発音され、 この音読みに引きずられて「留(とまり)」は「る」となり、伝播するにしたがって「ろ」の発音に変化 していったのが下呂という名の由来なのか。あるいは、「下々」のイメージに引きずられるよりも、単に「しもつとまり」の発音が長すぎて言い難く、音読みして簡略化したのが由来なのか。 「呂」 についてはあきらかに「ろ」の発音に風呂の呂を重ねたのが由来ということでいいでしょう。
下呂の北側には 中呂 、 上呂 という地名もあります。しかし中呂も上呂(上留)も温泉 で栄えた呼称ではありませんので、下呂の呂にならって変えてしまったと思われます。
今では奥深い山国が自然という資源、観光資源として評価され、下呂というインパクトのある発音も広告効果の一端を担っています。豊かな自然と良い泉質の温泉、歴史的評価、名前の由来変遷など、下呂温泉の大事な要素ですね。
2004年2月17日